てれびの取材2もうだめクマー

2005年10月25日

小説「カフェオレ」

人が死ぬ映画は大嫌いだ。

彼女にせがまれて流行りの純愛映画を見たら…案の定、恋人が死ぬ話だった。
彼女のウルウル瞳は、まだ映画の余韻の中。あぁ忌々しい…。カフェオレ三杯飲んでも僕のイライラはおさまらないじゃないか、まったく。

「おまえなぁ…」
僕が話しかけても、濡れたまつ毛はうつむいたまま。
「ああいうの、作られた感動だろ?人が死んだら悲しいのは当たり前…そういうのを商売の道具にしてるわけよ?…なんで策略に引っかかるかなぁ…」
キョトンとした瞳がこちらを向いた。
「実際、ああいう話作るやつらって、ホントに大事な人に死なれた経験あんのか?実際を知ったら金儲けには使えないと思うんだけど」
僕は更に続ける。
「何で最近の純愛ものって人が死ぬんだろ…設定としてズルイんだよ、安易にお涙頂戴でさ……痛っっ!!
「バカ!」

僕の足に激痛と青アザを残し、彼女はふいっと横を向いてしまう。

…な、何か怒らせた?これだから女はワカラナイ。僕はマズイこと言ったんだろうか…。カフェオレおかわりしたら、ご機嫌なおるだろうか?
脳内グルグルの僕に、彼女はポツリと言った。


「好きな人が生きてる、なんて…普段あんまり考えないよね」

…は?

「再認識するために、ああいう映画があるんでしょ?」

…え…?

彼女はまた黙ってしまった。



「僕は…。」
何故か声が震える。
「僕はイヤだよ。好きな人が死ぬとか…考えるのもイヤだ。…だから…」

言葉を詰まらせる僕の手を、彼女はぎゅうっと握ってくれた。
「恐いよね…ほんと……」

ぎゅう。
僕も手を握り返した。

手を離さなければ、彼女も僕も死なないだろうか。ずっと一緒に居られるだろうか。


だから人が死ぬ映画は嫌なんだ。
カフェオレの湯気のむこうで微笑む君をみたら、なんだか僕も泣けてきたよ。

at 14:30│Comments(0) 小説 

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