新酒試飲会POP STAR

2005年12月05日

小説「手帳」

来年の手帳を買った。
いつもは年明けに慌てて買うんだけど、今年は何となく早めに購入。たまたま立ち寄った本屋で見つけた、ビニール表紙の普通の手帳。

新しい手帳は、なんだか心が躍る。
汚れひとつないピカピカのカバー。新しい紙の匂い。真っ白なスケジュール。何の根拠もないけれど、来年は良い年になるような気がする。

パラリ。
表紙をめくると、まっさらな手帳は淡々と時を綴っていた。毎日毎日が同じ長さで、澄んだ川のように進んでゆく。
僕は後ろのページに、自分の名前を書いた。まるで魔法使いの契約のように、この手帳は僕のものとなる。一年間、僕と共に生きる道しるべ…。よく考えると、こんな小さいノートに振り回されて生きるのも不思議な話だな。

日付は今年の12月から始まっていた。
「ああ、もう使えるんだ…」
はやる気持ちが抑えきれず、僕は今月のスケジュールを書き込む。仕事、プライベート…スケジュール帳は少しずつ、僕の時間を刻んでゆく。ああそうだ、今月は彼女の誕生日じゃないか。そろそろプレゼントを選んで……当日はどこで食事しようか…。
仕事納めの日を書き込み、今年最後の月の行方が決まった。

パラリ。

ページをめくると、そこは新しい年。
真っ白なページ。まだ見ぬ新しい時。

僕は少し考えながら、まだ遠い日の予定を書き込み始めた。
大きなイベント、友達の誕生日……暦は春となり、夏を迎える…。タイムマシンに乗っているように、少しずつ来年が見えてくる。そして秋…冬…。来年も終わりに近づいてきた。

「あ…」

来年の12月。
また彼女の誕生日がやってきた。

僕は目を細めながら、その日に赤く、印をつけた。
来年は、何をプレゼントしようか-------------------。




いつもは年明けに買う手帳。
早めに買って良かった。
彼女の誕生日を二度も祝う事が出来たから------

来年も 良い年になりますように。


at 22:01│Comments(0) 小説 

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